こんにちは。名古屋市天白区にある歯医者「医療法人IDG いちろう歯科・矯正歯科」です。
インビザライン治療は、見た目の美しさと機能的な改善を目指す矯正治療法です。なかでも、抜歯ありの治療は特定のケースにおいて大きなメリットをもたらすでしょう。
今回は、インビザラインで抜歯ありになる症例と、抜歯ありのインビザライン治療のメリット・デメリットについて詳しく解説します。
目次
インビザラインではどのようにして歯を動かす?
インビザラインに限らず、矯正治療では歯根と骨の間にある歯根膜の働きを利用して歯を動かします。
歯に力を加えると、片側の歯根膜は引っ張られて厚みが増すでしょう。押された側の歯根膜は縮み、厚みが減少します。歯根膜は一定の厚みを保とうとする性質があるので、縮んだ側では骨が形成され、引っ張られた側では骨が吸収されて歯が少しずつ移動するのです。
インビザラインにおいては、現状の歯並びとは少しずらして設計されたマウスピースを装着して、歯に持続的に力を加えます。マウスピースは1日20〜22時間装着し、1〜2週間に一度交換して理想の歯並びを目指します。
インビザラインでは、効率的に歯の動きを促進するために、アタッチメントや顎間ゴムなどの補助装置を使用することもあるでしょう。補助装置を正しく使用することで、効果的かつ迅速に理想の歯並びを実現できます。
抜歯ありでインビザライン治療をするメリット
インビザラインでは、抜歯ありで治療する場合と抜歯なしで治療する場合があります。
抜歯ありでインビザライン治療をするメリットを確認しましょう。
歯列を整えやすい
抜歯ありでインビザラインを行うメリットは、十分なスペースを確保できることです。歯並びの乱れは、歯がきれいに並ぶためのスペースが足りていないことが原因の場合が多いです。抜歯してスペースを確保できれば、歯をよりきれいに並べやすくなります。
特に、重度のガタガタした歯並び(叢生)の場合、抜歯ありでインビザライン治療を進めれば理想的な歯並びを実現しやすいでしょう。
治療期間が短くなる可能性がある
特に、1~2本の大きく位置がずれた歯を矯正する場合、抜歯するメリットが大きくなります。抜歯せずに矯正を試みる場合、まず周囲の歯を動かしてずれた歯のためのスペースを作る必要があるでしょう。十分なスペースが確保されたあとに、ずれた歯を本来の位置に移動させることになります。
位置がずれている歯以外の歯も移動させなくてはならないので、治療期間が長くなるでしょう。抜歯ありで治療すれば、気になる歯のみを移動させるだけで治療が完了するかもしれません。ずれている歯が抜歯の対象になった場合は、さらに治療期間は短くなるでしょう。
歯肉退縮のリスクが低減する
位置が大きくずれた歯を動かすと、移動距離が長いため歯に過度な力がかかり、歯茎が下がることがあります。歯槽骨の過度な吸収を引き起こすためです。
歯茎が下がることを歯肉退縮とよびますが、歯科医師が歯肉退縮のリスクが高いと判断した場合は、無理に歯を残すよりも抜歯したほうがよいでしょう。
抜歯ありでインビザライン治療をするデメリット
抜歯ありでインビザライン治療をする場合、いくつかのデメリットも存在します。後悔しないためにも、事前に理解することが大切です。
治療期間が長くなる可能性がある
メリットとして治療期間が短くなる可能性をお伝えしましたが、抜歯ありでインビザライン治療をすると治療期間が長くなる場合もあります。
矯正治療において抜歯をする際は、通常上下の4番目または5番目の歯を抜くのが一般的です。抜歯したあとは、抜歯によって生じたスペースを埋める必要があります。
抜歯によって生じた大きなスペースを埋めるために、歯並び全体を大幅に動かさなければならない状況になることがあるでしょう。ずれている歯を並べてもスペースが余る場合は、ほかの歯も動かしてすき間を埋めなければならず、治療期間が長引く可能性があるのです。
健康な歯を失う
抜歯ありでインビザライン治療をする大きなデメリットは、健康な歯を失うことでしょう。特に長期的な視点で考えると、年齢を重ねた際に健康な歯が少ないほど、認知症などの発症リスクが高まるとされています。
虫歯やケガでの歯の喪失とは異なり、矯正のためだけに健康な歯を抜くことは、将来的な健康リスクを不必要に増加させる可能性があるのです。歯の本数が減少することで、将来的に虫歯やケガで歯を失った際の治療の選択肢が限られる可能性もあります。
抜歯ありのインビザライン治療は、健康面でのリスクが伴うことを理解する必要があるでしょう。
抜歯で生まれたスペースが残る可能性がある
歯を並べるスペースを作るために抜歯をした際は生じたスペースを埋める必要がありますが、スペースを埋めるプロセスが長引くことがあります。場合によっては最後までスペースが完全に埋まらず、すき間が残ることもあるでしょう。
すき間が残ると、見た目の問題だけでなく、将来的に隣接する歯が傾く・移動するリスクや、歯並びが乱れるリスクも生じるのです。
食事しにくい
抜歯によって生じたスペースが完全に埋まるまでの期間、食べ物を噛むのが困難になる可能性があります。すき間に食べ物が詰まりやすいなど、食事や歯磨きが難しくなる可能性もあるでしょう。
インビザライン治療で抜歯が必要なケース
では、インビザライン治療で抜歯が必要になるケースとはどのような症例でしょうか。抜歯が必要とされることが多い症例を確認しましょう。
出っ歯
抜歯ありでインビザライン治療を行うケースに、出っ歯(上顎前突)があります。上の前歯が顕著に前方に突出している状態を指しますが、歯が並ぶためのスペースが不足していることが原因の場合が多いです。
適切なスペースを確保するために、まず抜歯を行います。抜歯後、アタッチメントを装着して矯正治療を開始することで、歯並びを整えられるでしょう。
受け口
受け口(下顎前突)は、下の顎が上の前歯を超えて前方に突出している状態、すなわち「しゃくれ」の状態です。受け口を治療する際は、まず抜歯を行って顎間ゴム(歯の動きを促進する専用のゴム)を用いて歯を徐々に動かします。
しかし、重度の受け口の場合は骨格に根本的な問題があることが多いです。外科手術が必要になることもあるでしょう。
叢生(そうせい)
抜歯ありでインビザライン治療を行う症例の一つに、叢生があります。叢生は、歯が不規則に並び、歯同士が重なり合っている状態を指します。
叢生では、歯が適切に並ぶためのスペースが不足していることが多いです。まず抜歯を行って、スペースを確保する必要があるでしょう。
抜歯後、専用のアタッチメントやゴムを装着し、歯を段階的に動かします。
インビザライン治療で抜歯しなくてもよいケース
インビザライン治療で抜歯しなくてもよいケースについて解説します。
歯列を横に広げられるケース
成人がインビザライン治療を受ける場合、こどものように顎の骨を簡単に広げることは難しいです。成人は顎の骨の成長がすでに終わっているからです。
しかし、インビザラインの特徴は、マウスピースを持続的かつ長期にわたって使用することで、歯槽骨(歯を支える骨)の形を徐々に広げて歯並びを改善できることにあります。歯と歯の間に適切なスペースを作り出し、抜歯せずに歯をきれいに並べられる場合、抜歯は必要ありません。
奥歯を後ろに動かせるケース
インビザライン治療は、特に奥歯を後方に動かすことに長けています。奥歯をさらに奥に移動させることで、歯並びを整えるためのスペースを確保できる場合は抜歯しなくてもよいでしょう。
IPRで対応できるケース
抜歯を回避する方法の一つに、IPR(ディスキング)という方法があります。歯の側面をわずかに削り、歯を並べるためのスペースを作る技術です。
削る量は非常に少なく、エナメル質を約0.3mm薄くする程度なので、痛みを感じることはほぼありません。虫歯のリスクが高まることもないため、安心して治療を受けられます。
インビザライン治療で抜歯をするときの注意点
抜歯した当日は歯科医師の指示に従い、飲酒や長時間の入浴、激しい運動、喫煙は避けてください。血行を促進するため、痛みや腫れの増強につながり、抜歯部位の回復を妨げる可能性があります。
また、抜歯直後は麻酔が効いている状態です。舌や唇、口内の粘膜を噛むリスクがあるため、食事は麻酔が完全に切れてから行ってください。
麻酔が切れたあとの食事では、硬いものを避け、お粥のような柔らかい食べ物を選ぶことが推奨されます。抜歯部位への刺激を避けて負担を軽減することで、トラブルを回避しつつ傷口の回復を促進することが可能です。
まとめ
インビザライン治療における抜歯の必要性は、歯並びの状況によって異なります。出っ歯や受け口、重度の叢生においては、矯正の効果を最大限に引き出すために抜歯が行われるでしょう。
しかし、抜歯は健康な歯を失うリスクや、治療期間が延長するリスクなどが伴います。特に抜歯した当日は、飲酒や激しい運動、長時間の入浴、喫煙を避け、麻酔が切れるまで食事を控えなければならないでしょう。麻酔が切れてからも、柔らかい食べ物を摂ることが推奨されます。
抜歯ありでインビザライン治療を行う際は、メリットとデメリットを総合的に考慮することが重要です。
インビザライン治療をご検討の方は、名古屋市天白区にある歯医者「医療法人IDG いちろう歯科・矯正歯科」にお気軽にご相談ください。