こんにちは。名古屋市天白区にある歯医者「医療法人IDG いちろう歯科・矯正歯科」です。
インビザラインは、透明なマウスピースを装着して歯を動かす矯正治療のひとつです。インビザライン矯正は、遠心移動が得意とされています。
遠心移動とは、具体的にどのような技術なのか疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
今回は、インビザライン矯正で行う遠心移動について詳しく解説します。遠心移動が必要な症例やメリット、注意点もご紹介しますのでぜひ参考にしてください。
目次
インビザライン矯正で行う遠心移動って何?
インビザライン矯正で行う遠心移動とは、奥歯を後方に移動させる技術のことです。歯科用語では、歯並びの真ん中を基準にして奥歯側を遠心、前歯側を近心と呼びます。
ワイヤー矯正では遠心移動が難しいとされているため、遠心移動ができることはインビザライン矯正の大きな特徴といえます。インビザラインは、マウスピースで歯列全体に力を加えて歯を根から動かすため、奥歯の位置を調整できるのです。
奥歯の遠心移動を行うことで、前方の歯並びに隙間を作ることができ、抜歯をせずに歯並びを整えられる可能性があります。
ワイヤー矯正では、前から4番目か5番目の小臼歯を抜歯して前歯を後方に移動させるのが一般的です。奥歯は、ほかの歯を動かすための固定点として扱われます。
ワイヤー矯正でも奥歯を遠心移動させることは可能ですが、ヘッドギアなどの別の装置を併用する必要があるため簡単ではありません。
遠心移動を行うメリットとは?
インビザライン矯正で遠心移動を行う最大のメリットは、抜歯をせずに矯正治療を行える可能性があることです。ワイヤー矯正では、抜歯をして歯を並べるスペースを確保することが多いです。
しかし、健康な歯を抜くことに抵抗を感じる方は少なくありません。ワイヤー矯正で抜歯が必要と言われた症例であっても、インビザライン矯正では抜歯せずに治療できる可能性があります。
ただし、親知らずがあると遠心移動ができないため、親知らずの抜歯は必要です。また、遠心移動では奥歯から順番に歯を1本ずつ後方に動かしていくため、前歯の歯並びを調整できるまでに時間がかかることがデメリットです。
遠心移動が必要な症例
遠心移動は、歯を並べるスペースを確保するために行われます。遠心移動が必要な症例は、以下の3つです。
- 出っ歯(上顎前突)
- 受け口(反対咬合)
- 叢生(乱ぐい歯)
詳しく解説します。
出っ歯(上顎前突)
出っ歯は、上の歯が大きく突出している歯並びのことです。
出っ歯はもともと歯が大きいなど先天的な原因や、子どもの頃の指しゃぶりなど日常の癖が原因で起こります。出っ歯の場合は、上の歯の遠心移動が必要でしょう。
遠心移動だけではスペースが十分に確保できない場合は、抜歯が必要となることもあります。
受け口(反対咬合)
受け口とは、上の歯よりも下の歯が前方に出ている歯並びのことです。軽度の受け口の場合は、下の歯を遠心移動させることで改善が可能です。
ただし、生まれつきの骨格が問題であるなど重度の受け口の場合は、難しいかもしれません。通常の歯列矯正に加えて、顎の骨を調整する外科的な手術が必要な場合もあります。
叢生(乱ぐい歯)
叢生や乱ぐい歯と呼ばれる歯並びは、歯が重なり合ったり前後に不規則に生えていたりするガタガタした状態を指します。叢生は、顎の大きさに対して歯が並ぶスペースが足りていないことが原因の場合が多いです。
前歯の数本だけが重なっている叢生の場合は、遠心移動で対応できる可能性が高いでしょう。
インビザライン矯正での遠心移動の方法
インビザライン矯正での遠心移動は、最初に一番後ろの奥歯を遠心に動かします。
歯は顎の骨があるところまでしか動かせないため、移動距離には個人差があります。日本人は顎が小さい方が多く、片側2~3mm程度の遠心移動が一般的です。
一番奥の歯の移動が完了したら、奥から2番目の歯を移動させます。1本ずつ順番に後ろに移動させて、最後に前歯の調整を行います。
マウスピースだけでは遠心移動が難しい場合は、顎間ゴムと呼ばれるゴムを上下の歯に引っかけることもあるでしょう。
遠心移動だけでスペースが確保できない場合
インビザライン矯正では、遠心移動だけでは歯を並べる十分なスペースを確保できない場合があります。遠心移動でスペースが確保できない場合は、以下の3つの処置を行います。
- IPR
- 抜歯
- 側方拡大
詳しく解説します。
IPR
IPRとは、歯の側面をヤスリで削ってスペースを確保する方法です。
削りすぎると知覚過敏などの症状が現れる可能性があるため、1本の歯につき片側0.2mm~0.2mm程度削ります。前歯と奥歯を合わせた全ての歯にIPRを行うことで、最大5mm程度のスペースを確保することができます。
奥歯の遠心移動と併用してIPRを行うことで、大きなスペースを確保することができるでしょう。
抜歯
スペースを確保するのに最も効果的な方法が抜歯です。
上下の前から数えて4番目か5番目の小臼歯を抜歯するのが一般的です。小臼歯の抜歯では、1本あたり7mm程度のスペースを確保することができます。
歯並びの乱れが大きい場合、抜歯で大きなスペースを確保しないと歯並びを整えることが難しいです。遠心移動やIPRでスペースの確保ができない場合は、抜歯を選択することでスムーズに歯並びを整えられるでしょう。
側方拡大
側方拡大とは、専用の装置を使用して歯列のアーチを横に広げてスペースを作りだす方法です。アーチを1mm広げることで0.7mm程度のスペースを確保することができます。
ただし、大人の場合は成長期の子どもに比べて難しいため注意が必要です。
遠心移動の注意点
インビザラインの遠心移動には、以下の2つの注意点があります。
- 重度の症例では抜歯が必要
- 失敗するリスクが伴う
詳しく解説します。
重度の症例では抜歯が必要
歯並びの乱れが軽度の場合は、抜歯を行わずに遠心移動で歯列を整えられる可能性が高いです。
しかし、歯並びの乱れが重度の症例では抜歯が必要です。抜歯に抵抗を感じる方は多いですが、基本的に食事の際は奥歯や前歯で物を噛むため、小臼歯の抜歯が影響することはありません。
また、見た目に関しても、歯並びが整えば小臼歯の抜歯は大きな問題ではなかったとわかるでしょう。
失敗するリスクが伴う
インビザライン矯正での遠心移動は、難易度が高い技術のため失敗するリスクが伴います。奥歯が計画通りに移動しなかったり、歯の根っこが露出してしまったり、失敗に終わるケースがあることを知っておきましょう。
奥歯の遠心移動が失敗する理由としては、以下の3つが挙げられます。
- 親知らずを抜歯していない
- 遠心移動が困難な骨格
- 顎間ゴムの使用時間不足
詳しく解説します。
親知らずを抜歯していない
親知らずは、遠心移動の際に障害物となります。顎の骨に埋まったままの親知らずであっても、抜歯をしないで遠心移動を行うと奥歯の根っこが親知らずにぶつかり、移動できなくなるのです。
遠心移動が困難な骨格
もともと顎が小さく奥歯の骨の奥行が少ない場合は、遠心移動が難しいでしょう。事前検査がしっかりと行われておらず、顎の骨の状態を把握できていなかった場合にこのような失敗が起きる可能性があります。
事前に十分な検査をせずに遠心移動を計画する歯科医院の場合は注意が必要です。
顎間ゴムの使用時間不足
顎間ゴムは、上下の歯にゴムを引っかけて、ゴムの引っ張る力で奥歯の遠心移動を行う方法です。症例によっては顎間ゴムを併用して遠心移動を行います。
顎間ゴムは自分で付け外しする必要があるため、使用時間不足や付け忘れなどが続くと遠心移動の失敗につながります。
顎間ゴムの使用時間が不足していることは、遠心移動の失敗の一番の原因とも言われています。顎間ゴムを使用する場合は、使用時間をしっかりと守りましょう。
まとめ
インビザライン矯正では、遠心移動を行うことでスペースを確保し、抜歯をせずに歯並びを整えることができる可能性があります。
しかし、インビザライン矯正における遠心移動は、難易度が高い技術のため失敗のリスクが伴います。遠心移動が失敗すると治療期間が延びる原因となるため、慎重に治療を進めることが重要です。
遠心移動が難しいと判断された場合は、抜歯など別の方法を選択することでスムーズにインビザライン治療を進められるでしょう。
インビザライン矯正を検討されている方は、名古屋市天白区にある歯医者「医療法人IDG いちろう歯科・矯正歯科」にお気軽にご相談ください。